書 名「おたく」の精神史 一九八〇年代論
著 編大塚英志
協 力
出 版[発行]星海社 [発売]講談社
発行日2016年3月24日
発行地東京
定 価1400
たてcm18
よこcm11
備考
ISBN978-4-06-138579-5
星海社新書78
内容
[目次]
序章 見えない文化大革命 外国の人たちによせて
朝日文庫版・まえがき

第一部 「おたく」と「新人類」の闘争
1章 「おたく」の誕生
八三年とはどんな年だったか/シミュラークル・アイドル/仮想現実時代の幕開け/エロまんが業界の活況/全共闘文化としてのエロ劇画/三流エロ劇画ブームの終焉/『漫画ブリッコ』リニューアル/中森明夫「『おたく』の研究」
2章 「新人類」とは何であったのか
休刊の教訓/「神々」と「新人類」/何者でもない「新人類」/先着順/新人類は努力を欠いていた/差異化のゲーム/中森の「おたく」批判
3章 記号としての性
性表現の世代交代/性と自意識の乖離/ヌードグラビアの問題/手塚治虫の「まんが記号説」/記号絵のエロティシズム/二次元世界批判/「劇場」としての「街」/身体の記号化を求められる少女たち
4章 消費による革命
「YOU」と宮崎勤/糸井重里と新人類文化/「後期新人類」と左翼革命/階級差を消滅させる/上野千鶴子の消費社会論/「中流幻想」の左翼的肯定/コム・デ・ギャルソン論争/仮想のの革命
5章 末井昭と「エロ本」の自己解体
宮崎勤の部屋のエロ劇画誌/セルフ出版/みなもと太郎/まんが家デビューの経緯/エロ雑誌の読者層を疑う/伝説の『NEW SELF』/サブカル誌化するエロ雑誌/『写真時代』と荒木経惟/フェミニズム的な自己表現
6章 新人類と男性原理
菊地桃子は「遊ぶタイプ」か/「誰に」犯されているか/「犯す」主体の喪失/吾妻ひでおと少女まんが/ロリコンまんがの文体/『漫画ブリッコ』の女性執筆陣/女性向けポルノグラフィーの誕生
7章 「徳間書店第二編集局」とは何であったか
契約編集者時代/『アニメージュ』初代編集長/新しいまんが評論の登場/アニメーターにまんがを描かせる/『アップルパイ』/マニア系まんが誌のスタイルを作る/『少年キャプテン』創刊/「メジャーなまんが」の呪縛

第二部 少女フェミニズムとその隘路
8章 岡田有希子と「身体なき」アイドル
アイドルの自死を誰が語るか/情報としてのアイドル/菊地桃子批判/好みの女を求める/女性性の自己破壊/言葉の貧しさ/語りきれない内面/遺書に託した感情
9章 黒木香とピンクハウス
村西とおると出版流通/肥大した自意識/滑稽なまでの「私」語り/ピンクハウスの異形さ/過度の少女趣味に自閉/コピーの果てにオリジナリティが生まれる/彼女たちの失敗
10章 「内面」の崩壊
まんがと文学/少女まんがの言語技術/紡木たくの内面表現法/「主体」を忌避する男たち/少女まんがの変質/「私」の多元化/神秘論に走る少女まんが家
11章 上野千鶴子の妹たち
女性とオウム問題/フェミニズムへの違和感/上野千鶴子への愛憎/「フェミニズムのようなもの」/母性の自己崩壊/八〇年代消費社会の思想
12章 かがみあきらと「ぼくたちの時代」
新人まんが家の急逝/リニューアル号は完売/少女まんがの文体に近い/一人称の内面を描く男性まんが家/宮台真司の原体験/「ワブコメ」の誕生/「他者」なき恋愛幻想
13章 岡崎京子の居た場所
岡崎京子がひらいた領域/居場所が無かったロリコン雑誌に迷い込む/ジャンルを開拓する苦しさ/「女」と「少女」の共生/二四年組の正統な後継者/前例になった装丁

第三部 物語消費の時代
14章 ディズニーランドと現実化する虚構
仮想現実の商品化/受け手の過剰な読み/「ヤマト」から「ガンダム」へ/作品に内在する歴史、世界観/偽史作りが進展した日本の八〇年代/政治の季節が終わって/日本型「おたく文化」の限界
15章 収集する主体
「集める」行為の変容/仮面ライダースナックからビックリマンチョコレートへ/不況とキャラクター産業/「ビックリマン」と都市伝説/サンリオの奇跡/物語消費/稀少性を捏造する/宮崎勤の「収集物」
16章 UWFとは何であったか
虚実の仕切り直し/短命に終わった第一次UWF/前田日明の孤独/プロレス批評の必要性/プロレスの虚実を仕切り直す/前田と佐山の離反/現実感の再構築
17章 都市伝説化するジャーナリズム
世間話と都市伝説/「噂話」とネットワーク/口コミで広がった『危険な話』/捏造された人面犬/口コミメディアの発達/柳田國男と「世間話」/ワイドショー化するジャーナリズム/「社会」と「世間」
18章 前世を探した一四歳
編集者たち/個人的な信仰/宗教まんがの編集/教祖のゴーストライター/マニュアル化された修行/前世の仲間探し/創作おまじない/「一四歳」の乗り越え方
19章 泡のような日々
バブル週末期の広告業界/出版論としての『物語消費論』/物語マーケティング/メディアワークス設立/『ぴあ』の敗北/情報の海を取捨選択できるか
20章 昭和天皇の死
宮崎勤と昭和の終わり/記帳に集まった若者たち/「終わりなき日常」を確認/「おじいさん」の姿をした天皇/相手性なき存在/祖父の幻覚/自己イメージを天皇に投影/祖父と同一化する宮崎勤
21章 あの日のこと
八九年八月一一日/殺到した電話/宮崎勤を擁護するきっかけ/「M君は自分だ」/「企画書」的世界/サブカル・ジャーナリズムの誕生/宮崎勤による「企画書」

第四章 九〇年代のなかの八〇年代
22章 湾岸戦争と「文学者」たち
「文学者」の声明/「文学者」の再構築/いとうせいこうの戦争論/八〇年代からの逃亡/ボードリヤールの主張/イラクでのプロレス興行/純朴な反戦思想へ回帰
23章 漂流する人々
父と子の断絶/食卓のある車/読者の知る権利/表現としてのまんが/「成熟」という問題/日常に戻る物語
24章 オウム真理教を論じるためのメモ
世代のズレ/オウムは理解しやすい存在/「多重人格探偵」/オウムと戦後民主主義/残された問題/オウムをいかに歴史化するか
25章 宮台真司が「心」を語る理由
エロ本業界の女子高生/おたく化した社会学/ブルセラ少女たちの「心」は消滅したか/「心が壊れている」/自意識をめぐる戦後史
26章 福田和也と透明なナショナリズム
保守を演じているのか/右と左が補完しあう/「日本」語りの透明さ/不快感のないナショナリズム/サブカルチャー化するナショナリズムとは/「保守」に居場所を見出した「おたく」たち
27章 「エヴァンゲリオン」と一四歳
通過儀礼/成熟しないキャラクター/オウム後の表現/拒否し続ける主人公/戦後おたく表現の終着点/引きこもりの心理プロセス/「私」であることへの渇望/父権の不成立をいかに生きるか/自作自演の通過儀礼/自らの認知を「社会」に求める/戦後サブカルチャー史の終着点

終章 二〇一五年の「おたく」論
「黒子のバスケ」事件と「オタクエコシステム」における「疎外」の形式

あとがき
朝日文庫版・あとがき
星海者新書版・あとがき
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